先日、仕事が終わり、帰るのに自転車に乗ろうとした。
すると、なんということか、自転車のライトのところに
トンボが停まっているではないか。
まだ夏なのに…、もしやこのトンボさん、
このところの涼しさに、秋だと勘違いしたんだろうか。
迷子になってこんな街なかに来てしまったんだろうか。
じっ…と停まっているので、そのままにして自転車に乗るも
いっこうに動く気配がない。
面白いので、そのまま彼を乗せて、家まで帰ることにした。
私には普通の速度でも、彼にとっては結構な向かい風に違いなく
吹き飛ばされないように、いつもよりゆっくりこいだ。
それでも気になって、前を見ては手元のライトを見る、
を繰り返し、家への旅路を走る。
彼らは、いつもどのくらいの速度で空を飛んでいるんだろう。
自転車なんかに停まったものだから、
いつもより随分早い速度で、知らない場所に連れていかれてる、
ってわかっているのかな?
それとも、知らない土地で行き先を知らずに乗るバスや電車みたいに、自転車からの風景を楽しんでいるのだろうか。
信号でとまったりするたびに、
飛んでいかないかなと見てみたけれど、
ついには私の家について、自転車を停めても
トンボはそこにいるのだった。
好きなときに自分で飛んで行けばいいや、と
彼を置いて部屋に入る。
次の日、自転車を見ると、トンボはいなくなっていた。
きっと、まだ夏の、山の方へ帰って行ったのだろう。
文:佐藤史恵
2009.08.01
自転車と旅をする
00:48
| Comment(0)
| 雑記