日日 旅日和

2009.05.15

春が咲く

今日、北海道の春かくのごとし、といわんばかりの
カラリ晴れ渡り澄んだ空気の涼しいこと。
北の人々はこういう日和に弱い、
私の勤めるお店も、陽のあるうちにたいそうな大入り、
あれよあれよとくるくる立ち働いたあと、
ぼんやりとした頭で大通公園をまっすぐに西へ。

土を踏みたかった。緑を体に入れたかった。

ふわっと、おおきく溢れるような新緑は
陽に透けて、みどりではない、金色。
葉っぱ一枚一枚に、春の、独特な、みなぎるような生命力。
そこをわたる風。やわらかい土。
なにもかもが春。

やがてどんづまりの、西13丁目にあたる資料館のうらっかわへ
ふらふらと迷い込む。

そこはもっとも緑が濃くて、ベンチがずらり半円を描く、
不思議と静かなうすぐらい場所。

でも、知らずにおりました、
大きな藤棚が、そこにあったことは。

煙るごとくのうすむらさき。咲きかけの藤の花。
今年、急いだ桜のあと、すぐライラック、すぐ藤の花。
速度を上げて、春が通り過ぎていく、
そんな景色がとても目について、慌てつつも、また楽しい。
ベンチに座って、木漏れ日の射す景色に身を置く。静かな心。

やがて、モハモハの犬を遊ばせる奥様、
それを見て歓声を上げる若い女の子二名、
医大生らしき男子ふたり、その知り合いらしい女子ふたり、
さそわれるようにあつまり、ベンチはいっぺんに華やぐ。
なのでひとり鼻歌歌いながら、ゆっくりと帰路へ。


気持ちよい春の西日をあびるごとに、
つい、大好きな詩を、思い出す。
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「春の日の夕暮れ」中原中也(抜粋)


トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮れは穏やかです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮れは静かです




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「トタンがセンベイ食べて」が凄い、
「アンダースローされた灰」ってのは
下から青くなっていくような山のことを言うとの説も。



文学って、春の風景にひそんで居る、
「桜の森の満開の下」もしかり、
そう思って風景を眺めるのもまた一興。

おみやげに桜のぼったりした花を。落ち花。椿のよう。


090515_2121~01.jpg



文:山本曜子
21:27 | Comment(0) | 雑記
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